ビーン。ビーン。 と研究室(ラボ)中に響き渡るスクランブルベルと、赤く点滅する非常灯に、メシアは形相を豹変させて声を上げた。
ゴポッ!
ゆらりとヒューマニック・ウォータの水面が揺れたと同時にザアッ! と、風が起こりうる場所ではないのにラボの天井に向かって流れ、竜巻の如く風は渦を巻いた。
「母上! ってる……、笑ってるわ!!」
風の中心となっているのは、今しがた目を覚ましたばかりの少女であった。
カプセルの前で小刻みに震えて、飛ばされない様に必死でメインコンピュータにしがみついているナキとは違い、切れ長の眼をうっすら細めて静かに微笑んでいる。
「メシア様、ナキ様とご一緒に神殿へ非難してください! さぁ、早く!」
ドウン!
ラボの床にヒューマニックウォータが流れ出す。 カプセルが、内の水圧に耐えきれずに破損したのだ。
そしてそれと同時に、まだ10代後半だろう少年がその親子に階上へ行くように指示し、2人の背中を完全に見送るまで自分はカプセルから離れなかった。
「……冬姫(トキ)、俺だよ。覚えているだろう? 毎日同調(シンクロ)した甲斐があったね……。もういいよ、鎮まりな」
少女、トキはまったく相反する肩まである白銀髪(プラチナブロンド)をさっと手でかき上げ、少年はまだこの世に“生”を受けて間もない彼女に言った。
「……もういい? PSY(サイ)つかわなくなったら、みんな、もどってくる」
真紅の瞳が色を和らげ、宙に弧を描いていた金髪がさらりと裸体(からだ)にしなだれ落ち、嵐は、嘘のようにその場から消えた。